相続の争いが急増しています。グラフからも、急増しているのが分かります。
相続に関する民法の内容が、大まかすぎるのも原因の一つといえます。誰が、どれぐらいの割合で相続できるのか(相続分など)の定め方が、争いの原因になったり、争いを深刻にする原因になっているといえるのです。
司法書士は、相続に関しては、主として土地建物の相続登記手続でかかわりを持ちます。しかし、その登記手続を行う為に、誰が、どの不動産を相続で取得するのかなどについて、遺産分割協議書を作成することになります。
この遺産分割協議書を作成するときに、私たち司法書士は、当然に次のような内容についても求めに応じてアドバイスをしています。
司法書士は、相続に関する仕事を進めていくうえで、さまざまな段階でアドバイスを求められます。
ところが、このアドバイス、司法書士だけでなく、弁護士さんのアドバイスも、時に、小さな争いの火種に油を注ぐことになって大火事にしてしまうこともあるのです。そこが、こわいところです。
具体的な例をもとに話すことにします。一番争いの起きやすいケースは、後妻Aさんが相続人の一人として、亡き夫の遺産を亡き夫Xと先妻Yとの間の子供達(B、Cの二人いるとします)と一緒に相続するケースではないでしょうか。
このケースの法定相続分は、Aが全遺産の2分の1、子供B、Cはそれぞれ全遺産の4分の1、そのように民法に定められています。
ところで、このAの法定相続分の割合は、1981年(昭和56年)1月1日よりも前に、Xが死亡した場合には、2分の1ではなく、3分の1と定められて いたのです。知らない人が多くなっていますが、この日を境に、配偶者の法定相続分が大幅に引き上げられたわけです。このことは、見方を変えますと、この日 を境に、子供の法定相続分が大幅に引き下げられたともいえます。
先の例でいえば、先妻の子供達B、Cの法定相続分が大幅に引き下げられた結果、子供の産みの親である先妻Yの立場、苦労も、それにともなって引き下げられたような結果になるわけです。
この民法の改正では、配偶者であった先妻の立場、苦労を相続、遺産分割にどのように反映させるかについてまったく触れられませんでした。
後妻さんと先妻の子供との遺産分割協議は、このようなケースに関して民法が規定する法定相続分の内容が先妻の立場、苦労に配慮しない、大まかすぎる内容であること、先妻への思いが後妻と子供達で大きく違うことなどが原因で、円滑にいかないことが多いようです。
このような事情があるにもかかわらず、遺産分割協議を始める最初に、後妻さん側が「私の法定相続分は2分の1」ということを前面に強く出したら、話し合いはうまく進むでしょうか。しかし、この「2分の1」を錦の御旗のように最初から強調しつつ話し合いに入るケースが、あまりにも多いのです。それでは、円 満に行くものも行かなくなってしまいかねません。
この「2分の1」の切り出し方、タイミングが、とてもむずかしいのです。あるいは、少し譲って、「私は、先妻さんのご苦労をよくよく考えたいと思っています」といったスタンスが、結局は、無用の争いを起さずに、よい結果になることも多いのです。
裁判になれば多額の費用がかかる、長くてつらい相続争いがふえています。ちょっとした知恵と気配りで、そんな相続争いをしなくて済む事例が多いのです。